第十五話






始まる前から決していた戦いにもかかわらず、私たちは異様なまでに……粘りに粘っていた。

でも、その粘りも、素子さんが何度も被弾するに連れ、なくなり始める。

一度攻撃を受ければ、隙が出来る。隙が出来れば、追撃を許してしまう。

何度も何度も、素子さんの機体が弾けて、揺れて――――――……。


素子さんの機体の損傷は、もう耐え切れないレベルになってしまっていた。


そして、もう駄目だと思った瞬間、私の見つめるウィンドウ群に、新しいウィンドウが追加された。

私はそのウィンドウに表示された文字を、小さく呟く。


「戦闘フィールド内に、遺跡……素粒子、反応……増大?」


その言葉に驚いたのは、実際に口にした私ではなくて、

私の後ろの艦長席に座るキツネさんだった。


「なんやってぇー!? しのぶー!」


それはもう、この悲惨な状況下には全く似つかわしくない、とんでもない大声だった。

いきなりのその声に驚いて、私は後ろを振り返る。

すると、キツネさんは艦長席から立ち上がっていた。

まるで宝くじの前後賞が当たったとか、そんなことを告げられたようなキツネさんの反応。

ちなみに、その隣にいた補佐のカオラも、口をぽかんとあけて呆然。それにつられて、私も呆然。


…………悲惨さとか、もう駄目だという諦め。

そんな空気がブリッジにはあったはずなのに、それが一瞬で吹き飛んでいた。


「な、なんなの……?」


私のその問いに、キツネさんとカオラの二人は、言葉による答えは返さなかった。

二人とも席を離れて……と言うか、自席から大ジャンプをして、こちらまで無重力空間を泳いでくる。

そして私の肩につかまって、ずぃっとウィンドウを覗き込む。

……そ、そんなことしなくても、言ってくれれば、二人の席にも表示するのに……。


「スゥ! この反応は!」

「間違いありません! 例の素粒子反応です!」


二人が騒いでいると、また新たなウィンドウが表示される。

ピッという電子音とともに登場したそのウィンドウに書かれていた文字は、

『B・MT確認』と言うもので、さらにその下には、B・MTの現在位置が事細かに記されていた。


「せ、先輩?」


その表示の意味に戸惑うけれど、でも、私の手は驚く頭とは反比例するように動いていた。

これまでに見せたこともない、私自身が驚くタイピングの速度。


そして、ウィンドウがさらに表示される。

艦の外装部に取り付けられた多種多様のセンサーは、座標位置の情報を取得し、処理し、映像として表示する。

もともとこの戦艦は、カオラが先輩を見つけて、そして捕まえるために建造したもの。

被弾してセンサーの2割は破壊されていたけど、それでも……残りのセンサーが鮮明にB・MTの映像を捉えていた。


そう、確かにB・MTだった。

先輩の愛機にして、カオラの最高傑作。

褒められたことではないけれど、世界を相手にして対等に渡り合った、すでに一種の伝説的な機動兵器。

先輩が回収したため、今の世界の機動兵器には、遺跡のテクノロジーがほとんど組み込まれていない。

でも、B・MTは違う。

先輩の感覚を補う機構を搭載するために、その随所に遺跡のテクノロジーが収められている。


B・MTに比べれば、現行兵器は石器か何か……というのは、言い過ぎ?

でも、そう思えてしまうほど、突然現れたB・MTは、私たちにとって心強かった。


私たちは、しばしウィンドウに表示されるB・MTに見惚れた。


「せんぱ〜い……」


涙が溢れます。もちろん、生きていると信じてました。信じてましたけど、でも。

そんなことを考えつつ左右を見やると、スゥも涙目。

キツネさんも涙目ではないけど、感慨深そうに微笑んでいました。


私たちがうっとりとしていると、先輩のB・MTが行動を開始します。

攻撃をしだした機動兵器の隙間を、B・MTは華麗にすり抜け、そして――――――

そして……………………消えました。


「――――――は?」


突然画面から消えたB・MTに、キツネさんがそんな音を漏らします。

でも、驚きはそれでは収まりません。

実は私たちが映像に見入っている間に、例の素粒子反応表示ウィンドウが点滅していたのです。

私は何をどう言えばいいのか分からなかったけれど、

とりあえず『オペレータだもん』と自己を再構築して、口を開いた。


「えっと、先輩……浦島景太郎搭乗機であるB・MT、消滅しました」

「なんでやねん!? え、なに!? 助けにきたんとちゃうん!?」

「わ、私に言われても」


曖昧なオペレートに、艦長は大混乱。

オペレーターである私の襟元を掴みにかかります。

でも、驚きはまだまだ終わりません。


「素粒子反応増大! これは……MT・S! 素子さんの前です!」

「素子の!?」

「あ、B・MT消滅! ……あ、いえ、B・MT再出現! はぅ、消滅!」

「………………なんなんや、さっきから。消えたり、現れたり」

「こっちが聞きたいですよぅ」


キツネさんが呆れたように呟き、それに私も同意。

結局、私たちは終始何も分からないまま、状況に流され続けた。


――――――あぁ、違う。

ただ一つだけ、分かっていたことがあります。

それは、先輩が私たちを助けに来てくれたと言うこと……。


先輩。お帰りなさいって言ったら、今度は……ちゃんと聞いてくれますよね?





      ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





ごく自然に、意識が覚めた。起きるべき時間が来たのだろう。

頭の中の時計がかちりと音を立て、それを合図に私・青山素子は目を開けた。


すると目に飛び込んできたのは、ひなた荘のそれに比べて、幾分無機質な天井。

…………私は、起きたばかりの頭で考える。

何故、この天井はこんなにも無機質なのだろう、と。

答えは簡単だった。

ここは、この部屋は、私の乗る戦艦アマランカオラン内で、自室として使用している部屋の天井だからだ。

和風の旅館を寮として使っているのが、ひなた荘なのだ。

戦艦の個室の天井と、和風旅館の一室の天井。そもそも比べるのが間違いと言うものだ。

仮に、この艦が設計者によって、他に類を見ないほど居住スペースに力を注がれていたとしても。


「……いや、そうではなくてだな」


自分の思考に呟きを添えつつ、私は身体を起こす。

すると簡易ベッドの脇に愛刀である『ひな』が、立てかけられていた。

ひなを見やり、考える。私は死んだのではなかっただろうか?

どうにも敵の攻撃を回避することが出来ず……ああ、もう自分は死ぬのだと、そう考えなかったか?

敵の攻撃を受け、目の前のものが全て吹き飛び、その破片が顔に刺さる想像を……。

いや、そう言えば……実際に見たものは、何か強烈な光だったように思う。

あの光は何だったのだろう? 

それとも、ここは夢の中で……そのうち風景が一変し、三途の河の前になるのだろうか?


「来い、ひな」


そう呼ぶと、ひなはベッドの上で身を起こす私の手の中に、自らすっぽりと納まった。

…………ひなが、私の言うことを聞く。手の中に、ひなの重みを感じる。なら、これは現実?

仮に夢でも死後の世界でも、ひながいるのであれば、私に怖いものなど…………姉上くらいしかいない。


まぁ、とりあえず。生きているのか、死んでいるのか……

あるいは、夢を見ているのかどうかなど、ベッドの上でどれだけ考え込んでも、意味がない。

自分の脚で立って歩けるのであれば、動けばいいのだ。

ブリッジに行けば、誰かが現状説明をしてくれるだろう。


そう結論つけて、私はベッドから降りる。

そしてひなを再度壁に立てかけて、着替える。

私はいつの間に服を着替えたのだろう?

パイロットスーツを着ていたのが、最後の記憶であるというのに、今はなぜか普通のパジャマだ。


服を脱ぎながらに、私は「やはり……」と、思考する。

目覚めたばかりで鈍っていた思考が、ようやく普段通りの回転を見せ始めた気がした。


――――――やはり、私は死なずに、救助されたのだろう。

現実感がないのは、死に直面して感覚が麻痺しているからだと考えられる。

だがしかし、同時に違和感を覚える。

あの状況で、何故この艦が沈まずに、健在なのだろう?

誰が私を救助したのだろう? まさか、可奈子が?

あるいは、スゥが何らかの秘密兵器を、私にすら内緒で用意していたのだろうか?


そんなことを考えながら、パジャマを脱ぎ終えた私は、

今日着るべき服を、壁に据え付けてあるクロゼットから取り出す。


――――――と、そこで私の部屋の扉が開いた。


可奈子だろうか。それともスゥか、しのぶか。キツネさんはさすがに忙しいだろう。

この艦が無事に動いている以上、艦長は基本的にブリッジで何らかの仕事をする必要があるからな。


「すまない。着替え中だったか」

「…………は?」


予想もしない声が、ドアからは聞こえてきた。

クロゼットの中に突っ込んでいた顔を出し、そちらを見やってみる。

そこにいたのは…………私たちが求めた……浦島景太郎だった。


私は浦島の声に反応せず、ただただ無言で、その姿を凝視する。

以前に見たときよりも……何故かは知らないが、随分と背が縮んだように思える。

いや、これは若返ったと表現した方がいいのだろうか?

何があったんだ、浦島……?


「大丈夫か?」

「な、なにがだ?」

「どこか痛むところはないか? スゥちゃんは問題ないと言っていたが」

「ああ、今起きたところだが、特にこれと言って……それより、お前は……」


そう言いつつ、私は自分の体を見下ろす。

着替え中のため、身に着けているものはレースのショーツ一枚のみ。

外傷がないかどうかを見るには、ちょうどよい格好だった。

………………って、ちょっと待て。


「浦島、貴様……見たな?」

「いや、ほとんど見えていないから、大丈夫だ」

「ほとんど見えていないと言ってもだな……」

「あぁ、すまない。配慮が足りなかった」

「まぁ……私も普段この艦には女しかいないから、油断していた」


私がそう言うと、浦島は苦笑して、その場で回れ右をした。

もっとも、それはポーズでしかないのだろう。本人がそう言うように、見えていないはずだから。


…………裸を見られていない。しかし、安堵は出来ない。むしろ、物悲しいとさえ思える。

どうせなら、見られて、照れて、照れられて、頬を赤くし合いたいと、そう思う……。

過去には、そうしたやり取りが何度もあったのだ……。


さきほど胸中で『現実感がない。死に直面して感覚が麻痺している』と考えたにもかかわらず、

私は随分と艶っぽいことを考え出したのかも知れない。

浦島が目の前にいて、夢ではないと思えて……ただそれだけで、私の中の何かが変わったのだろうか?


苦笑しながらに、私は着替えを進める。

黒のタートルネックに、ジーンズを適当に着こんで……。

いや、しかし、浦島の中の私と言えば、多分袴姿ではないか?

ここは再会を祝して――――――…………って、ちょっと待て。

私は今、放置しておけない疑問を、色々と無視しているのではないだろうか?

目の前に浦島が現れたからと言って、少し舞い上がりすぎではないだろうか?


「なぁ、浦島?」

「ん……?」

「何故、お前がここにいる? 何故、背が縮んでいる? いや、その前に、私はどうなった?」

「それはこれから説明する。皆の前で、一度に。個人個々に説明していたら、二度手間だ」

「分かった。それで、皆は?」

「すでにブリッジに集まっている。素子ちゃんが一番最後だ」

「だから、起こしに来てくれたのか?」

「そうだ。まぁ……ブリッジに居辛かったと言うのもある」

「…………居辛かった? 何故だ?」

「小さい可奈子と大きな可奈子と、ラズが……いや、これもあとで説明する」

「色々とあるようだな…………すまん、待たせた。着替え終わったから、こっちを向いていいぞ」

「ああ。じゃあ、行こう」


私が赤い袴を着終えてそう言うと、浦島は手を差し出してきた。

私はその手に握って、自室を後にブリッジへと向かう。


……どうしてこいつは若返っているのだろう? やはり、かなり気になるのだが。

説明するとは言ってくれたが、出来れば今すぐにでも聞きたいところだ。


と言うか……せっかくついた身長差が……。

私の成長が止まり、浦島が私を追い越してくれて、ちょうどいい感じになったというのに……。

中学生ではないか、と言うくらいに若返ったように思える浦島。

そしてその中学生の家庭教師を勤められそうな年齢である、私。

姉と弟ではないか……これでは。


私よりかなり背の低い……20cmほど低い浦島景太郎が、私の手を引いて先行する。

感覚が不鮮明であったはずなのに、その歩みに危なっかしさはない。

これが私の施した訓練の結果であると思うと、誇らしくもあり、悲しくもある。

こういう風に歩けるようになったから、浦島は復讐の道を進んでいったのだから。


私と浦島は、無言のまま歩き進む。


(うむ……)


前を歩く小さな浦島を見つめていた私は、小さく首を縦に振る。

気づけば、今の浦島はこれはこれで可愛いのではないか……などと思える私がいた。

私も随分と馬鹿な女になったものだな、と思った。





      ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





――――――ブリッジには今、多くの人間が集まっていた。


順番に名前を挙げていくと…………この艦の長で、私たちをまとめてくれるキツネさん。

次に、この艦を作り上げたカオラ・スゥ。その横には、オペレーターを務めるしのぶさん。

さらにその隣に、先ほどまで自室で休んでいた素子さん。

そして、私・浦島可奈子。

……以上の5人が、元々この艦に乗っていた人間である。


そんな私たちの対面に立つのが、私のお兄ちゃんである浦島景太郎。

そしてその背後には、ラズリと呼ばれる少女と…………幼い私が立っている。



ああ、そうだ。私だった。

数年前の私が、お兄ちゃんの隣に立っている。



(何と言うか……納得が出来るような、出来ないような……)



私は中学生の私を見て、ふぅっと嘆息した。


――――――お兄ちゃんは今、自身が体験したあの消失事件以降のことを、私たちに説明してくれた。

この世界から消え、過去の世界へと戻り……過去の世界でも遺跡を回収して……

…………そして、様々な葛藤の末に、私たちの元に帰ってきてくれたのだ。

自分が消えた後、私たちがどうなったのかを考えると、見捨てることなんて出来ない……と。

やっぱり、お兄ちゃんは優しかった。どこまで行っても、優しいままだった。

だからまぁ、お兄ちゃんの隣には、過去の世界で出会った私がいるのだろうけれど……。


過去の世界にいた私。お兄ちゃんの跳んだ、この世界ではない世界にいた私。

やはりどの世界であろうとも、私は私であったようだ。

『お前を連れて行けない』と言うお兄ちゃんに対し、

絶対に離れないと決意し、そしてここまでついて来たとのことだった。


お兄ちゃんにしがみついて、離れない。何が何でも、ついて行く。

そう結論つけて、実行した『過去の私』の心情は、まぁ、分からなくはない。

むしろ、よく分かる。よくやったと言ってやりたいくらい。

もしも『お兄ちゃんなんて、どうでもいい』とか『勝手にすればいい』とか、

『別に、私はついて行く気なんて、微塵もありません』なんて結論に至る『私』がいれば、

ここにいる二人の私は、きっとその私を睨みつけることだろう。


まぁ、とにもかくにも、過去の私がここにいるのは、いい。

別にいい。いいと思う。思うのだけれど。何と言うか……。


私は過去の私と、見詰め合う。

なんだか、ひどく不思議な気分だ。昔の自分がいるのだから。

もちろん、それはあちらも同じだろう。大きくなった自分が、目の前にいるのだから。

私は過去の私を、何と呼べばいいのだろう? 

どちらかがコピーというわけでもなく、どちらもホンモノなんだけど……うーん?

お兄ちゃんや皆は『私たち』をどう呼ぶんだろう? 

可奈子Aとか、B? 可奈子その1? それとも、大可奈子に、小可奈子?

大可奈子に小可奈子は、なんだか面白いネーミングかもしれない。あっ、でも実際には、呼ばれたくない。むぅ。


悩んでいる私たちを置き去りにして、話し合いは進みます。

説明を受け終えたキツネさんは、お兄ちゃんに単刀直入にこう聞いた。


「……で、これからどないするん?」

「特にこれと言って、考えてはいない。逆に、皆はどうする? 一先ず、命は助かったが……」

「まぁ、ウチらもまだ何も思いつかへんけど。実感湧かへんしなぁ。……カナコが何故か増えとるし」


そう言い、キツネさんは私と過去の私を交互に見つめた。

そして次に、その視線をカオラ・スゥに向ける。


「それに、スゥはいきなり子持ちになっとるし……」


キツネさんの言葉通りに、カオラ・スゥは一人の女児の親となっていた。

彼女の前には、お兄ちゃんが連れてきたラズリという少女が立っている。

身体は生体でも、その中身は元々お兄ちゃんを補佐する支援AI。


過去の世界で、研究に使用されていた生体に、

お兄ちゃんの中のAIが入り込んで、ああいう存在になったと説明された。

そして元を辿れば、そのAIの創造者は、カオラ・スゥとしのぶさん。

だから、お母さんと言う表現は、あながち間違いではないのだけれど……。


「改めて、はじめまして。私は元B・MT搭載・独立進化型戦闘支援AI[TAMA]です」


自らの意思で人の身体を得たいと考え、機会を目の前に実行し、お兄ちゃんの傍に立った支援AI。

独立進化型と銘打ってあるけれど、少し進化し過ぎな感じ。

分類的には、もう人間? それとも……有機体に憑依中の情報生命体とか?

私がちょっとした疑問について考えている間にも、ラズリはカオラ・スゥに挨拶を続ける。


「ケイの紹介にもあったけど、今はラズリという名前があるから、それで呼んで欲しいと思います。

 私は貴女をどう呼ぶべきでしょうか? 母上? お母さん? ママ?

 支援AIであった頃より、私は随分と精神的に成長したと考えています。

 だから、色々と話したいことがあります。聞いて欲しいことがあります」


自らの創造者を前に、少しばかり興奮しているのか。

早口でまくし立てるラズリに、カオラ・スゥは困惑していた。

それはそれで、なかなか珍しい光景だった。






あぁ、とにもかくにも…………落ち着くまでに、私たちはまだまだ時間が必要であるらしい。

けれど、時間だけはたくさんあるのだ。ゆっくりと、馴染んでいこうと思う。


何しろ私たちは今、私たち以外には何もない、次元のハザマにいる。

この艦アマランカオランの外には、ただただ純白の世界が広がっているのだ。


B・MTが突然目の前に現れたかと思うと、ここに連れてこられて……

あぁ、本当に最初にここに飛ばされたときは、心の底から驚いたものだ。

白に覆われて、何もない世界。どこまで続いているのか、分からない世界。

そんな場所に、まさか死んでもないのに来るなんて、思わなかったから。

と言うか実際、『私は、死んじゃったの……?』と呟いたくらいだ。


でも……私たちを追ってくるものも、攻撃を加えてくるものもいない。

ここは今、私たちだけの世界だ。生きていると分かった今、ここは安心が出来る場所。

今まで、駆け抜けてきたのだから、少しくらい落ち着いてもいいと思う。





私は過去の私に向かって、手を伸ばす。

過去の私も、私に向かって自然に手を差し出してくる。

お互いの口からは、やはり自然に言葉が出た。


「よろしくお願いします。未来の私」

「えぇ、こちらこそよろしく。過去の私」


なんだか、SFチックな受け答え。

私たち二人は、お互いに小さな笑みを浮かべた。









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