第十五話





Gジャンにワイシャツに、ジーンズ。

すでに定型化している感のある私服をまとい、俺はシロをつれて町中を歩いていく。

その背中には、白竜会道場で使う『何故か真っ黒な胴着』の入ったリックを背負っている。

シロはシロで唐草模様の風呂敷を背負っているので、まるで夜逃げの予行演習をする兄弟みたいだ。

あるいは、何らかの再現フィルムを撮影中の役者&子役か。まぁ、とにかく普通じゃない雰囲気だ。

シロには尻尾と言うおまけまでついているので、なおさらだろう。


それでも、あからさまに怪奇の眼で見られないのは、俺の人徳だろう。

……ぶっちゃけると、愛子の本体である机を担いで、日常的に町中を移動していたせいで、

俺が今さら尻尾つきの子供をつれているくらいじゃ、ご町内の皆様は全然驚いたりしないらしい。

オバちゃん連中なんかは、『どこいくんねー、学校は?』と、フツーに聞いてきたほどだ。


と言うか、『愛子ちゃんは? 愛想を尽かされたかい?』とか、

『愛子ちゃんがおらんからって、学校サボっちゃダメよ』とか、

『なんね、その子? 親戚かい?』とか、ちょっと気さく過ぎる気もする。

学校サボっちゃダメって……メドーサさんと愛子を助けるためなんスよ! 

……ったく。俺だって意味もなくサボったりなんて…………まぁ、時々したくなるけど。

あと、シロ? オバちゃん連中には人狼だろうが何だろうが、知ったこっちゃなさそうだ。

世の中、オバちゃんって強いなぁ。うん。ウチのオカンは、その中でも一際だろーけど。


そんなこんなで、俺はシロを事務所のすぐ近くまでつれて来ていた。

ここからはシロが一人で進まなければならない。俺は事務所に入れないしな。


「いいか、シロ。美神さんはすぅぅぅんげぇ、金にうるさい人だ」

「そ、そうなのでござるか」

「おう。報酬がない以上、多分まともに話は聞いてくれん」

「そ、そんな! それでは行く意味がござらぬよ!」

「まぁ、待て。そうは言っても、美神さんも鬼じゃないんだ」


俺は戸惑うシロの肩を掴み、瞳を見据えて言葉を紡ぐ。


「シロが自分の気持ちをはっきりと言えば、必ず動いてくれるはずだ」

「拙者の気持ち……?」


「シロは武士の子。いや、一人でここに来た以上、もう立派な武士だ。

 暴走する犬飼を止めるため、決死の覚悟だってもう出来てるんだろ?

 仮に力なき者がその刃に倒れようとする時、正義の意思を持つシロはどうする?」


「無論、この身を投じて、犬飼の凶刃から弱き者を守でござるよ!」

「ふっ。その意気だ、シロ。その熱い思いをぶつければ、根の優しい美神さんはきっと分かってくれる」

「分かったでござる。拙者、熱き武士の魂を懇々と語ってくるでござるよ!」

「おう。あぁ、あと、メドーサさんの誘拐の件は、俺とお前だけの約束だ」

「それも分かったでござる!」

「大事な人を守る戦いに、手出しは無用だ。勝負は、俺だけで着ける」

「それが熱き男の生き様というやつなのでござるな!」

「そうだ。だから、美神さんには伝えないでくれ。これは、俺の戦いだ」

「承知! では、拙者行ってくるでござるよ!」

「おう、あんまり張り切って、舌を噛むなよ?」

「大丈夫でござるよ!」


シロはふんっと強く鼻から息を出し、揚々と事務所に向かって行った。

とりあえず、これで『人狼の件を伝える』と『メドーサさん誘拐について他言しない』と言う、

二つの条件はちゃんと守ってくれそうだな。シロが割りと分かりやすい性格で、助かったなー。


俺の言った通り、美神さんは基本的に無報酬で動くことはない。

仮にもし、目の前で死にかけている幼児がいれば、そりゃ助けるだろう。

でも今回みたく、強い敵との戦闘が明確であるにもかかわらず、報酬が出ない場合は確実に渋る。

被害者が出て、犬飼にえらい額の懸賞金がかかれば、我先に倒そうとするかもしれない。

でも、それじゃ遅い。人的被害は言うに及ばず、フェンリルが復活すっかもしんないしな。

そんなわけで、シロの出番だ。

危ない人狼がいて、それを止めようとした父が倒れ、

そして幼くも信念を持ったシロが、決死の覚悟でその敵を討とうとする。

自分は死んでもいい。せめて、一太刀! そんな勢いで、突っ走ろうとする。

それを見た場合、美神さんはともかく、おキヌちゃんは黙っていられないはずだ。

美神さんが動かなければ『本当に、放っておくんですか?』と、悲しげに問いかけるはずだ。

すると、美神さんの良心にも刺激が走って、結局『ったく、しょうがないわね!』となる。

精力的に動かなくても警戒はしてくれるはずだ。あと、他のGS……唐巣神父に連絡したりとか。

犬飼がまだ都内に到達していない以上、ちょっとした警戒網でも意味はあるはず。


「ふっ、シナリオ通りだ」


美神さんとおキヌちゃんと言う、あの組み合わせを考えての、先のやり取りだった。

俺は一度は言ってみたい台詞を口にして、ちょっとした満足感を得る。

そして同時に、なんだか自分がちょっと汚れた気がした。

いや……小さい子に命を懸けるって発言させて、それで人の心を動かすってどうよ?

挙句に、それに対してシナリオ通りって…………俺、すごいヤなやつじゃ?


「せんせー、行って来たでござるよ」

「ん、お、おう、どうだった?」


汚れちまった自分に本格的に苦悩しようとしたところで、シロが帰ってきた。

どうだと聞いたものの、その表情は明るく、美神さんから色よい返事が聞けたことが分かった。


「最初は厳しい顔をしておられたが、最後には『分かったわよ』と」

「巫女服の子が、フォローしてくれただろ?」

「おキヌ殿でござるな。撫子のような人でござった」

「まぁ、何はともあれ、上手く行ったならそれでよしだ。道場に行くぞ」

「はいでござる!」


本日のミッションその1を完了した俺たちは、予定通りに白竜会道場を目指した。

さて……これからが問題なんだよな。

本日のミッションその2は、ズバリ『霊的な凝縮技術を向上させる』である。

ちなみにサブ・ミッションは、『シロの霊波刀のレベルアップ』だ。

どっちも問題だ。サブの方も…………どーやって教えたモンかなぁ。

まっ、休憩の時に気分転換として、テキトーにやってみるか。


「頑張るぞ、シロ」

「もちろんでござる」


俺とシロは、燃えていた。

今の俺たちなら、そのままスポ根ドラマに出演出来そうな勢いだった。

この勢いのまま、突っ走るぜ! ひゃっほう!


………………ふと素に戻ると、無理のあるテンションだな、これ。
















                  第十五話      特訓開始!
















山の中にある道場を目指して、えっちらおっちらと石階段を登ること10分。

木造作りのかなり大きな寺が、俺たちの視界の中に映りはじめる。

――――――ここが白竜会道場だ。

GSの育成機関と言う側面を持ち、大陸系の体術なんかも教えてくれる。

俺にとっては、色んな思い出の詰まっている大切な場所の一つだ。


ユッキーに半殺しにされかかったり、カンクローさんに襲われかけたり、

サボ念に因縁をつけられたり、メドーサさんの頭に神剣を刺しちゃったり……。


うぅっ、ぱっと思いついた光景は、ちょっと救いのない物が多いような気がする。

でもまぁ、その辺は深く考えずにスルーしておこう。

つまり、毎日楽しくドタバタしてたって事で。


「お、横島じゃないか」

「うぃーす。おひさしぶりっす」


俺は知り合いの顔を見つけると、簡単に挨拶をして、特別区画の使用許可を得ることにする。

久方ぶりってことで、ちょっと会話をしていると、わらわらと兄弟子連中が集まり出す。


ちなみにGS試験に出たのは、俺とユッキーとサボ念とカンクローさんの4人。

つまり、この道場に所属する人間の中で、実力が高いのは俺たち4人って事になっている。

でも、何だかんだで、俺は一番最後に入ってきた人間で、周囲の皆は兄弟子に当たる。

だから俺は、へこへこと腰を折りつつ、話を進めた。

応対してくれる人々は俺より身長が高くて、体重も重い人が多いんで、

へこへこしてるのが、何となく当たり前のような気がしてくるこの不思議。

実力的にどうだろうが、染み付いた小市民的な感覚は抜けないっぽい。


特別区画の使用許可は、あっさりと下りた。

メドーサさんがらみで、ちょっと色々ヤバイ事になってるんすよーと言ったところ、

兄弟子連中は『あー、まぁ、頑張れ』と、ちょっと引きつつ励ましてくれた。


魔装術を行使するためには、まず魔族と契約を結ぶ事が必要となる。

その儀式を行う場所が、道場の一角にある特別区画だ。

そこは無茶なまでに強い結界が張れるようになっており、一度その結界を張れば、

その区画は生半可な実力では、内部をのぞき見ることも出来ない場所となる。

ある意味、ここ白竜会道場の深遠だな。

でも、深遠とは言うものの、あそこで実際に魔族を呼び出すのは、やはり魔族であるメドーサさんだ。

つまり、メドーサさんがいないと、強い結界が張れるだけの場所でしかなかったりする。

メドーサさんの名前を出すだけで、『じゃあ、会長に伝えとくから、勝手に使えよ』とあっさり許可が出るのは、

やっぱり白竜会の身分の最高位が誰であるかを、よく表していると思う。

ついでに言えば、誰も使用する人間がいないんだし、許可できない理由もないだろうけどな。


そう言えば、メドーサさんって恐れられてたんだよな。俺は気にしないから、忘れてたけど。

男が多い道場なのに、メドーサさんに夜這いをかけたり、風呂を覗こうとするのは、俺だけだったし。


「うっす、どーもっす。んじゃ、ちょっと借りますんで」

「ところで、横島。そっちの子は?」


スキンヘッドのマッチョな兄弟子が、皆を代表して聞いてきた。


「あぁ、人狼のシロで、今俺の家に下宿させてるんすよ」

「犬塚シロでござる。以後、よろしくお願い申し上げる」

「あっ、そうそう。妖刀使いの人狼が来るかもなんで、皆も気をつけて」


ついでとばかりに、俺は狼の王を目指す人狼・犬飼の接近を告げる。

犬飼は霊力の高い人間を斬って、エネルギーを溜め、フェンリルになろうとしているんだし、

ここの連中に警告をしておいても、無駄にはならないだろう。

まだGS試験に出るほどではないと言っても、心身を鍛えている以上、

何もしていない一般市民よりは、白竜会の弟子の方が霊力も高いだろうし。

つーか、下手するとこの道場を強襲されて、全員がなます斬りに…………?

むぅ。一応、後でここいら一帯に結界を張っておこう。

いざという時、特別区画に逃げるための時間稼ぎにもなるだろうし。


美神さんに知識を詰め込んでもらったおかげで、簡易の結界術も、今の俺はバッチリだし。

そう言う意味では、水増しされた研修期間ってのは、今現時点ですごい有益だったかもなぁ。


「とにかく、ユッキーもボロボロにやられちゃったみたいなんで、いざって時は全力で撤退を」

「あ、あの雪之丞がか? ぼ、ボロボロに?」

「左様にござる。今も人狼の里で床に伏しておられるでござるよ」

「そりゃ、確かに洒落にならんな。奥義すら役に立たんのか?」


魔装術そのものは、実力の低い人や一般の弟子一堂には伏せられている。

でも、魔装術がどんなものかを知らなくても、ユッキーは目に見えて強かった。

そんなユッキーが負けたと言う事実に、皆は驚きを隠せないらしい。

俺の物差しで言えば、俺やユッキーなんてまだまだだ。

それこそ、人間のくせにメドーサさんを一瞬で無力化するようなやつも、世の中にはいるし。


「まっ、そんなわけでちょっと修行させてもらいます」

「あぁ、頑張れ。それしか、俺たちにゃ言える事がない」

「どーもっす。んじゃ、行くぞ、シロ」


俺は再び頭を下げて、道場内の特別区画へと向かった。


到着するなり、俺は胴着に着替えて、軽く準備運動。

ふと視線を横に向けてみれば、シロも風呂敷の中から別の服を出している。

シロ的に動きやすい服装にチェンジするつもりらしい。

あぁ、どうでもいいけど、昨日の夜は風呂に入ってないんだよな。

シロをつれて銭湯まで行く気力なんて、とてもじゃないけどなかったし。

でも、ここには食堂も風呂もあるし、心置きなく修行に励めるな。

シロも汚れモンがあるなら、ここで洗濯をさせとこう。

家に帰ってから洗濯機を回すのは、かなり面倒だし。


ちょっと主婦臭く生活面について考えつつ、準備運動を終わらせる。

ここまで軽く登山してきたようなもんだし、これで十分だろう。


俺は部屋の四隅に置かれた水晶柱に触れて、結界を発動させる。

動かし方がよく分からなかったので、とりあえず軽く霊波を当ててみたが……どうやら正解らしい。

これで、心置きなく修行を始められるな。


「シロ、俺が集束と凝縮の修行をしてる時は、あんまり近寄るなよ?」

「どうしてでござるか、センセー?」

「いやー、爆発するかも知んないし」


夢の中の出来事なんで、どうとは言えないんだけど…………

昨日の夜の夢の中、メドーサさんが帰った後、俺は一人で霊波刀を作ろうと頑張ってみた。

その途中、結構いい感じにそれっぽいものが出来たんで、さくさく次のステップに移ろうとか考えた。

『集束でそれっぽいもの完成』→『基本終了』→『応用の凝縮へ!』と言うのは、

明らかに間違った、早すぎるステップアップだった。今だと、そう思う。

でも、それっぽいものが出来て浮かれた俺は、強引にあのビー玉を作ろうとした。

霊力を体中から集めて、一つの塊にしようとした。

――――――で、制御が上手くいかずに、爆発した。

アレは何と言うか……ただ単に強力な霊弾攻撃が、発射前に手元で暴発したって感じだった。

夢の中とは言え、すげービビッた。死ぬかと思ったぞ、うん。まさに自爆!


そして今朝、俺はシロのアドバイスで、霊波刀の構成が上手くいった。

それっぽいモノから、ちゃんとした霊波刀に進化した。それはいい。

でも、集束や凝縮技能が目に見えて向上したのかと言えば、ちょっと疑問だ。

あのビー玉―――霊力の塊―――を作ろうとして、また暴発するかもしれない。

ここは結界が張ってあるから、外には被害は出ないだろうけど…………。


「中にいる拙者たちは危ない……ってことでござるな」

「そーゆーことだ。一応、気をつけとけよ」

「それを避けるのも、修行の一環でござるよ!」

「子供は前向きだなぁ……」


元気いっぱいのシロに苦笑してから、俺は霊力を練り始める。

両手に霊波を込め、集束させ、霊波刀を発現させる。かなり強引な二刀流だな、これ。

何とか刀の形を保っているけれど、振ったら消えてしまいそうだ。

でもまぁ、今はこれでいい。霊波を出すことが目的で、振るうことが目的じゃないし。


さて。こっからさらにパワーを凝縮して、この刀を一つの丸いビー玉にまでしないといけない。

その上で、そこにキーワードを込めることで方向性を与えて、後に一気に力を解放する。

さぁ、頑張れ、俺! 集束して、凝縮して、圧縮とかもして!

自分自身の霊力を、一つの塊にぃぃぃいい! うおぉぉおおぉ!


「――――――っ! はぁ、はぁ! 出来た! 出来たけど……っ!」


両手を組むことで、左右二本の刀を一つの大剣とする。

そこから出力やら集束やらを調節し、どんどんエネルギーを溜めていく。

その結果、俺の手の平の中にはリンゴくらいの大きさの、霊力の塊が発生した。


「って、どう考えても、でか過ぎ! 明らかに失敗!」


このくらいじゃ、まだまだダメなんだ。もっともっと小さくしないと!

現物はビー玉なんだし、いっそBB弾を目指すくらいの勢いで!

現状のこのリンゴ玉は、無駄があり過ぎるってことだな。

あるいは、霊力の練りこみが足りなすぎるって感じか?

まぁ、何はともあれ――――――……


「これ、ど、どうしよう?」

「せ、センセー! 何だかピシピシと言う、音が!?」

「うっわ、ヒビが! つーか、霊気が漏れ出してるっ!?」


俺の手の平の中で、霊塊は『マジで爆発数秒前! カウントしちゃうぞ♪』的な状態だった。


「どうするでござるか! センセーの腕がふっ飛んじゃうでござるよ、それじゃ!」

「くっ…………いや、シロ! 落ち着け! 俺にいい案がある!」

「おぉ、さすがはセンセー! して、その案とは!?」

「今からパスするから、お前が代わりにふっ飛べ!」

「そ、それはあまりに理不尽でござる!」

「美神さんなら、師匠の代わりに弟子が犠牲となれと言うぞ!」

「そこはきっと、見習っちゃダメな部分でござるよ!?」

「――――――って、アホなことも言っとれんぞ、マジで!」


俺は両手を頭上に持ち上げ、それから自身の足元を見やる。

畳の敷かれた道場内とは違い、ここは板張りだ。

体を打ちつけられたら、より痛そうだなーなんて思った。


「いいか、シロ! 今からこれを俺は宙に投げる。そしたら、伏せて全力防御だ!」

「あい分かったでござる! ついでに出来るだけセンセーから離れるでござる!」

「うぅ、こういうときは一蓮托生で、寄り添ってくれ、シロ……」

「せ、センセー! 上! 上っ! もう持ちそうにないでござるよ!」

「くっ、3、2、1、0で投げるぞ! 3、2、1……0っ!」


俺は不完全な霊塊を虚空へと放り投げ、体をバックステップで移動させる。

そして爆発のその時に備え、両腕を前に出して防御体制を取った。

その結果――――――ひゅるるるぅ〜……ごすんっ! ころころころ…………

霊塊は普通に落下し、しかしその衝撃でも爆発することなく、床を転がった。

怯えて構えていた俺や、尻尾をたらしていたシロが馬鹿みたいだった。


「なぁ、シロ。一つ教訓を得た」

「なんでござるか?」

「結界内だからって、不用意に慣れないモンを生成するモンじゃないな」

「それは、まったく持ってその通りでござるなー……」

「先に今のリンゴ球が収まりそうな、小さい結界を張るべきだな」

「いざという時は、そこに失敗した先の物を入れて、退避するでござるか?」

「ああ。その方が安全だろ? びっくりしなくていいし」


シロを苦々しく笑い合いつつ、俺は言葉を続ける。

なお、転がった不完全な霊塊からは、いまだに霊気が漏れていた。


「シロ。もう一つ教訓に付け加えだ」

「? もう一つ?」

「そっ。災害ってのは――――――」


――――――忘れた頃に、安心した頃に来るんだよなっ!

俺はぼうっと突っ立っているシロを抱きかかえ、壁際へ飛ぶ。

その直後、俺の背後で不完全な霊塊は崩壊し、破裂したのだった。



あー、もしかして……これはこれで、技として使えるんじゃ?



一瞬胸中にそんな考えが浮かぶものの、すぐに破棄した。

作った本人にもいつ爆発するか分からんモノは、さすがに技とは言えないだろう。

それに『爆』とか込めたら、もっと強くて、しかも安全に爆発が起こせるような気もするし。

と言うか、威力があるようで、実はそんなにないぞ?

結界に守られた部屋の床には、傷一つついていなかった。



…………はぁ〜〜、先は長いなぁ、おい。

俺はシロと床に倒れ伏しつつ、長く長く嘆息した。





次へ

トップへ
戻る



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送