第十一話



目覚めてみれば、世界は一変していた。

アスファルトの道路に、雲も疎らな空、コンクリート塀とその上で身を丸めて眠る猫。

愛子が家に来てからは、電車に乗ることも少なくなったので、

そんな通学路の風景は、俺の記憶に色濃く残っている。



それが、今はどうだ?



今の俺のいる場所は、雲より高い山の上。

空気は澄んでいるというより、その濃度自体が低過ぎるようで、ひどく薄い。

そして目の前には、にっこりと微笑む少女二人。



俺が最後に見た映像は、迫り来る地面。

その前に見た映像は、迫り来るGS美神。

さらにその前に見た映像は、迫り来る怪しい二人組み。

いや、つい先ほど……とは言え、本当についさっきかは、自信がないけど……

俺の目の前で微笑を浮かべる少女のうちの一人とは、会ったような気もする。


夢かと思っていたのだが、どうやら現実だったみたいだ。


まぁ、いい。

夢だろうが、なんだろうが、今目の前に美少女がいるということが、重要だ。そうだろ?

男・横島。どんなときであれ、美に対する追求を止める気は無い。



しかし、俺は彼女たちに飛び掛ることすらできない。



ふふ。なぜかって?

考えてみるといい。

分からないか?

うん? 目覚めてみて、いきなりわけの分からない場所だから、

混乱して飛び掛るどころじゃない?

そんなはずはないさ。

この横島、目の前に美女がいれば、そこが月の裏側でも気にせんよ!



正解は……………縛られてるんですよ。荒縄で。

ちくちくちくちくします。

そんなにきつく縛られてないんで、辛くはないのですが、縄が! 

文字通りに、荒い縄が! ちくちくちく!



「おはようございます、横島さん。私の名は、小竜姫。

 ここ妙神山の管理人にして、殿下……つまり天竜童子の保護者代行でもあります。

 この度は、大変なご迷惑をかけてしまい、まことに申し訳ありませんでした

 殿下は下界に強い興味を持っておられまして……

 今回の件は、私の監督不行き届きです。どうか、お許しください。

 殿下は今『お仕置き中』ですが、後ほど本人からも謝罪の意を…………」



一人の少女が、長々と言葉を発し、そして頭を下げてくる

ショウリュウキ?

小竜姫だって? うそ、何でこんな美少女が、小竜姫なんですか?

すっごいイイ意味で、期待を裏切られちゃいましたよ!



まぁ、それはいい。

今はおいておこう。

目の前に可愛い女の子がいる現状には、なんら不満はないしな。

それより聞きたいのは……



「いやぁ…………なぜに俺は、縛られてるんでしょうか?」



そう。何で俺が縛られているのか、ということ。

これが、天界流のおもてなしなのか? 

だとしたら、何てアブノーマルな……。

少なくとも、俺に縛られて喜ぶ趣味はない。


(……………う〜ん、縛られて喜ぶ)


ないよな? ないはず。

うん、ない。多分。



ああ、でも小竜姫っていうこの子が、

えっちらおっちら、あの細い腕で頑張って、寝ている俺の体をまさぐりつつ、

こうして縄を駆使したのだとすると、それはそれで萌える。

うん、萌えるぞ。

できれば、誰かに『やらされてる』っていうシュチュエーションがいいな。



『わ、私……そんなことできません!』

『訓練で、何度もやってるだろ』 (←なんのやねん)

『でも、あの時は人なんていなかったんですよ!?』 (←マネキンで特訓か?)



うん、顔を赤らめつつ、嫌々ながらに人を縛る美少女って良いね。

おお! 今のこの萌えを基にすれば、C−マインもいい感じに制御できそうだ。

うむぅ〜、あるいは突然暴走するかも、だけど。



俺がそんなことを考えていると、もう片方の美少女が、小竜姫ちゃんに話しかける。

もう片方。ウロコっぽいデザインの全身ぴっちりスーツを着て、目玉の耳飾りをつけている。

俺が一瞬目覚めたとき、見た子だ。

よし、もう片方なんて言い難いので、アイちゃん(仮)と呼ぼう。

目玉 → 眼 → アイってことで。 


「残念だけど、私にはヒャクメって言う名前があるのねー」

「あ、そうっすか」


小竜姫ちゃんに耳打ちしていたアイちゃん(仮)は、

急にこちらに振り返ったかと思うと、自ら名前を紹介してきた。


ヒャクメちゃんか。

う〜ん、小竜姫ちゃんより、色気の無い名前だなぁ。

ヒャクメって言われると、昔に見た泥棒の王様の話の、

『眼が9個しかないけど、名前は百眼』っていう妖怪を思い出すなぁ。


ちゅーか、ヒャクメちゃん。あんまり胸ないね。

あんなぴっちりスーツであの大きさじゃ、脱いでも期待できん。


「大きなお世話なのね!」

「おわ、俺もしかして、思ってること口に…………おれ? 出してないよな?」


もしかして、心を読まれているのだろうか。

相手はどうやら神様くさいので……小竜姫ちゃんなんて、角が生えてるし……

人間の心くらい読めても、おかしくは無いだろう。



ふむ。ちょっと試してみよう。



⊂。



「右なのね」



んじゃ、⊃。



「左」



じゃ、∩。



「下ね」

「おお、多分2,0だ。さすがだなぁ〜」

「それほどでもないのね〜」



俺が胸中に思い描いた記号の開いた方向を、ヒャクメちゃんはしっかりと回答してくる。

問題を提出する、なんて言ってもいないのに答えてくるということは、

やはりこっちの心を読んでいるのだろう。

ふふふ、なら、俺が心の中であーんなことや、こーんなことを思い描けば……!

実質、嫌がる女の子にヌード写真見せるセクハラと、相違ないじゃないですか!


『ほらほら! こんなんどうよ!』

『いや! だ、駄目なのね〜、女の子にそんなの見せちゃ!』

『でも興味あるだろ?』

『駄目なのね〜』


こんな感じか? 

うん、なんかいい感じかも。



「って、うおおぉぉおっ!?」



気がつけば、小竜姫ちゃんの剣が、俺の鼻先に突きつけられていた。

避けようにも、縛られているし!

どうにもなりません! 危ないって!



「横島さんの性格上、起き上がった瞬間に、

 こちらに飛び掛ってくる可能性を考慮し、縛らせていただきました。

 恩人にすることではないことは、重々承知だったのですが……」


「いや! 小竜姫ちゃんレベルに可愛かったら、

 体さえ自由になれば、即座に飛びかかっちゃいますよ、俺!

 この対応はわかるっす! どうぞお気になさらず! 俺も気にしませんし!

 だから、剣どけてください、ごめんなさい、おねがいします!

 いや、マジで可愛いですよ、小竜姫ちゃん!」


「……ありがとうございます、というべきなのでしょうか、この場合?

 まぁ、それはそうと、そういった理由で縛らせていただきました。

 話が、なかなか進まないと思いましたから」



なんか、小竜姫ちゃんは無茶苦茶ご立腹みたいだ。

謝り倒しているのに、小竜姫ちゃんの怒気は一向に減る様子を見せない。

まぁ、確かに。話はほとんど進んでませんね。


「あれっすね。自分で何回も言うのもなんだけど、ぶっちゃげその対応は正しいかと」


「そこまでわかっているのでしたら、

 できればこちらの話を最後まで聞いてほしいのですが。真面目に!

 ヒャクメもです! 横島さんとわけの分からない会話をしないでください」


どうやら、ヒャクメちゃんはこっちの心を読めるけど、

小竜姫ちゃんは無理みたいだ。

うん、そりゃ、さっきの会話は傍から聞いていれば意味不明だよなぁ。

って、そうじゃなくて。

ここでまた余計なことを考えて、話を脱線させたら、斬られかねない!



「…………えっと。で、何の話をしてたっけ?

 真面目に聞くんで、取り合えず最初からお願いします」


俺は、小竜姫ちゃんの剣を見つめつつ、そう言った。

小竜姫ちゃんは、何もかもに疲れたような嘆息で、俺の問いに答えた。











            第11話   横島クン、下山……あるいは、修行の道に出る!











「おお、横島! ソチには迷惑をかけ…………って、

 なんじゃその格好? なんだかボロボロじゃぞ?

 まだあの女にやられた傷が、治ってないのか?」


「んにゃ。この傷は、小竜姫様にやられた。あの人、怒らすと怖いね」



色々あった。

ああ、そりゃあもう色々とな。



俺がどうしてここにいるのか、とかの全部の説明が終わって、

天竜童子に会うために、縄を解かれたとき、

俺は無駄だとは分かっていながら、小竜姫ちゃんに飛び掛った。


ほら、もしかすると触れるかもしれないじゃん? 

いけるかもしれないじゃん?

飛び掛らなければ、可能性はゼロ。

しかし、飛び掛れば、触れる可能性は0.0000001パーセントくらいはあるはずだろ?



で、ぶん殴られました。ええ、容赦なく。

その前から、俺は人の話を聞かずにふざけてたので、

かなり小竜姫ちゃんはムカついていたっぽい。

『私の前でおちゃらけると、仏罰が下ります! というか、下します!』などと言われつつ、

俺は宙を舞った。キレーに舞った。お手本のように、舞ったよ。


俺は天竜童子を助けた、恩人であり客人。

そんな名目で連れてこられているから、この程度なんだろけど、

もしそういうのがなかったら、マジで斬り殺されてたかもしれないね。

小竜姫ちゃんは、可愛いけど、見た目によらず、かなり怖い娘みたいだ。


そこで俺は、標的をヒャクメちゃんに変更!

宙を舞いつつ体勢を整え、そのまま彼女の体にダイブした。

するとどうだ。

ヒャクメちゃんは、俺を避けようとはしなかった。

俺の心の動きなど、随時読んでいただろうに。

いや、もしかすると、読んでいても突然すぎて、避けられなかったのかもしれないけど。


とにかく、俺はヒャクメちゃんの胸に両手を添えつつ、そのまま彼女を押し倒した。

うん。意外とボリュームがあって、柔らかかった。

俺も生を触ったこと経験があんまりないし、目測はアテにならないな!


でも、びっくりしましたよ。

成功するなんて、最初から想定してないですし!

まさかの成功に驚き、俺は不覚にもそこで一瞬固まってしまった。

で、その一瞬で、またしてもボコにされました。


呆気にとられてたけど、すぐさま自分を取り戻したヒャクメちゃんには

何処からとも無く取り出したトランクで殴打されまくり、

小竜姫ちゃんには峰打ちを飽きるほど食らったなぁ。

もう、剣が折れるんじゃないかってくらい。



『美神さんが怒った理由が、私にもなんとなく分かる気がします。今なら』とは、

小竜姫ちゃんからの一言です。



ちなみにヒャクメちゃんは、そのまま怒って帰っちゃいました。

で、俺は小竜姫ちゃんに再度縛られて、

天竜童子のところまで引きずられてきたというわけだ。

あれだね。神様を怒らすと、怖いね。

たぶん小竜姫ちゃんは真面目なタイプで、俺とはそりが合わないんだろうなぁ。

俺のダイブに対するリアクションでも、

メドーサさんや愛子なら、もうちょい遊び心が感じられるし。



「……って、完全に自業自得じゃないか、おぬし」

「じゃあ、そういうお前は、何でやつれてるんだよ?」



俺が先ほどまでどういうことをしていたか、という説明に対し、

天竜童子の奴はあきれを含んだ返事を寄越したので、

俺も奴に他意を含んだ言葉を投げかける。


人間界に行きたいという思いを我慢できず、脱走。

挙句につかまって、ここ妙神山へと強制送還。

そしてお仕置き。

天竜童子も、俺のことを言える立場じゃない。


「ふっ。小竜姫のお仕置きによって、余も色々な世界を見てきたぞ」

「…………どんなことをされたのか、非常に気になるところだが、怖いし聞かないでおく」

「助かる。余ももう、思い出しとうない」

「ふっ。俺たちにもう言葉は要らないぜ」

「ああ、そうじゃな」


なんだか、よく分からない共感が、俺と天竜童子の間には流れていた。

ビバ、シンパシー。

いうなれば、今の俺たちは苦楽をともにした戦友だろうか。

俺と天竜童子は、がっしりと握手した。



「…………こ、この人たちは」



俺を引きずってきて、今は後方で控えている小竜姫ちゃんの額には、汗が流れている。

多分、あきれているんだろう。

浸っている俺たちは気にならないが、

客観視すれば、今の俺たちはかなりアホくさいだろうし。


「横島。そちには、今回の件の礼として、そして余の臣下として、

 この神剣を与えることとする。そして……重ね重ね礼を言うぞ、横島。

 デジャブーランドには行けなかったが、おぬしとの掛け合いは楽しかった」


そういうと、天竜童子は腰から自身の剣を抜き、俺へと手渡してきた。


「いいのか? お前の剣なんだろ?」

「余はもう大人になりかけておる。この剣は子供用であるゆえ、もう必要ないのじゃ」


確かに天竜童子の剣は、小竜姫ちゃんの剣と同じようなデザインだが、少々小さい。

長さも半分ほどしかないし、重さも大して無いだろう。

俺より少し背の低い小竜姫ちゃんの持つ剣と、

俺の腰までしかない天竜童子の持つ剣じゃ、それも当然だろう。


ちゅーか、貰えるモンは貰うけど……

剣というより、オヤジのくれたナイフみたいな感じだな。この大きさじゃ。



でも、天竜童子が言うには、

この神剣も天界の匠の技による業物であり、人間界の霊刀よりも高々位らしい。

まぁ、あれだ。時期天竜候補の持ち物なんだし、人界の霊刀に劣るはずもない。

俺のような若いGS&CH候補が持つにしては、かなり手に余る代物だな。



「……ん? てか、大人?」

「そうじゃ。角も少し伸びたじゃろう? 

 小竜姫のお仕置きで、かなり色々刺激を受けたからな!」

「ん〜、どれどれ?」



取り敢えず俺は天竜童子のズボンを引き下げた。

中からぴょこんと現れたソレは、まだまだ『男』というより『おとこにょこ』だった。

ふっ、まだまだ青いな。

いや、俺もチェリーボーイですがね?



「な! 何をするんだおぬしは!」

「ちょっとしたスキンシップだろ」

「ぬ、そうなのか!?」

「ガキが銭湯に行きゃ、こんなもん日常茶飯事だぞ。

 つーか、俺なんか女子のスカートもめくってたぞ!」

「ソレはおぬしだけじゃろ!」

「いや〜、クラスの男どもは皆やってたけど」

「……馬鹿ばっかりじゃな」



そんなことを喋っている最中、俺はふと、小竜姫ちゃんの異変に気づいた。

なんだか、顔が赤い。

ふむ、まさか天竜童子のアレを見て?



「小竜姫ちゃん?」

「え、あ、はい」

「なんか照れてる?」

「そ、そんなことは……」



むぅ。間違いなく照れてる。

あんなもん見たくらいで、この反応。

まさに初心なネンネの反応だな、これは。

ここは一つ後学のために、俺が一肌脱ごう!


「小竜姫ちゃん、あんなので照れてちゃいかん! 

 後々のために、俺がモノホンの『男』を見せて……!」


言いつつ、俺はズボンに手を伸ばし、ベルトを外しにかかる。

可愛いなぁ、小竜姫ちゃん。天竜童子ですら、700年生きているんだ。

小竜姫ちゃんは、何千年も生きてるのに、こんな反応ってことだろ?

まさに、天然記念物級!


「ひ、必要ありません! って、脱がないでください! ちょ、やめて!」

「恥ずかしがらずに、どうぞご覧あれ、小竜姫ちゃん!」

「もういやぁぁ!」

「うわぁっ!?」



▼なんと、小竜姫が怒った!

▼小竜姫は神剣を装備した!

▼小竜姫の攻撃が横島に迫る!


どうする、横島?!

横島のターン!


▽選択肢!

▼攻撃!
▼防御!
▼逃げる!
▼アイテム!



▼アイテム! ←決定!



横島はアイテムを使った!



▼アイテム『天竜童子の神剣』が、小竜姫の神剣を受け止める!












きんっ! かきんっ!













ぽきんっ。












「ああっ!」



「あ……」



「げっ!?」











折れた。










▼アイテム『天竜童子の神剣』は、音を立てて崩れ去った!



「よ、余がせっかく横島にやったのに……」

「す、すみません、殿下」

「いや、俺も悪ふざけがすぎたっつーか……」



天竜童子は俺の持つ『ぶっ壊れた神剣』に、視線釘付けで。

小竜姫ちゃんは、剣をかまえ持ったままの体勢で。

そして俺は、学生服のズボンを下ろし、下半身トランクスだけの無様な格好で。



みんなが皆、アホらしく固まっていた。



………………………………………

………………………

………



いや、ごめんなさい、マジで。

許して?





            ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






……結果から言うと、

許してもらえませんでした。



「ここは妙神山。天界と人界をつなぐ場にして、修行場です。

 本来、鬼門を制して訪れた人に対しては、実力に応じた試練を課し、その力を強めます」


「は、はい」


「よって、断じてお笑い道場などではありません。命をかけた修行の場なのです!」


「う、ういっす」


「横島さんは人化していた鬼門も制しましたし、ここでの修行資格があるのです」


「あっ、そうなんすか」



「しかし! もう言ってしまいますけど! できればもう、二度と来ないでください!

 もし来るなら、もう少し真面目になってからお願いします!

 ここはお笑い道場じゃありませんので!」



そんな会話の後、俺は妙神山から放り出された。

硬く閉じられた門が、拒絶の意を俺に突きつけます。

壁に張り付いている鬼の顔……まさに鬼門……も、

ほうり出された俺から視線を外してます。むっさ気まずそうに。



なんつーか、さすがに許してもらえなかった。

いや、天竜童子は許してくれたんですけど、小竜姫ちゃんはカンカンに怒ってて。

童子の奴は、お礼をするために連れて来たんだから、

追い出すのは礼儀知らずだとも、小竜姫ちゃんに言ってた。

でも、反論要素は有り余ってたんだよなぁ。

いくら恩人だろうが客人でだろうが、俺はやりすぎた。ごめん、小竜姫ちゃん。

まぁ、追い出されて、いまさら反省しても遅いけどな。


つーか、反省して、

今後二度と小竜姫ちゃんに、ああいう態度をとらないかと言うと……

うわぁ、自信ないなぁ。魂の迸りである以上、自制なんて無理無理!


だめだなぁ、俺。


いや、俺にも真面目なときは、ちゃんとあるんですよ!? 

可愛い女の子を前にすると、あんな感じになるだけで。


ああ、それがいかんのか?

でも、俺の生きる糧が女の子に対する『萌え』なのは、もう疑いようのない事実だし。

親からして、あのオヤジだし、まさに筋金入り? 

血筋的にも立証されてる? やっぱ、矯正できないな。


エロのない俺は、俺じゃないよ!

小便の出ない小便小僧か、なんかそんな感じだな!

他に言い換えると、肉の挟まってないハンバーガーか、なんかそんな感じ!




まぁ、それはそうと。




「どうやって帰ろう……」



俺の目の前には、切り立った岩山が聳え立ち、崖の下は雲に隠れて何がなにやら。

本当にここは日本なのか? 何県なんだ?

天界と人界をつなぐってことは、なんか特殊な結界の作用とかあるのか?



疑問は尽きない。

果たして、俺はここから生きて帰れるんだろうか。

俺の装備は、バンダナ、学生服、そして折れて刀身のなくなった神剣。

いや、刀身のない剣は、はたして剣と言えるのか……という、

登山なんてするような格好じゃない。



やっぱり、神様は怒らせちゃ駄目だね。

俺はそんなことを強く実感した。


ふと背後を振り返ると、鬼門と視線が合った。

…………こいつらを倒せば、もう一度中に入れてもらえるか?

いや、でもデコイはすでに使っちゃってて、手の内がばれてる。

C−マインの制御も、かなり問題が山積みっぽいし。

不意打ちじゃない以上、2対1で勝てる要素はないなぁ。




「まぁ、頑張って降りるとしますか……」

俺の呟きは、山々の間を吹きすさぶ風によって、かき消されていった。


…………うー。


ほ、本当に帰れるのか、俺?





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